ウスハイイロチュウヒに関して会員の投稿です。
  • AA 探鳥・撮影について(諏訪さん)
  • BB ウスハイイロチュウヒの解説紹介(解説文を会員が抄訳し、註をつける)


  • AA 探鳥・撮影について(諏訪さん)
     

    ウスハイイロチュウヒ

    ウスハイイロチュウヒ 話題のウスハイイロチュウヒを2月17日6回目のチャレンジで見ることができました。時間は15:20頃でした。
    今日はカメラマンも少なくその場所にいたのは4人でした。(諏訪哲夫)



     
    BB ウスハイイロチュウヒの解説紹介(会員の抄訳と註, 2009/3/8改訂)

    ウスハイイロチュウヒ Circus macrourus (英名 Pallid Harrier)

    出典 : 【「The Birds of the Western Palearctic」Vol.II, Handbook of the Birds of Europe, the Middle East and North Africa., (Oxford Univ. Press 1980)】に拠る。

    今回当地近くに現れたウスハイイロチュウヒ個体が、オス幼鳥―若鳥と見られることから、特にその辺りに焦点を当てて翻訳を行った。 
    尚、の《  》内は訳者註です。



    一般的特徴:

    体長40-48cm (tail 16-19cm), 翼開張95-120cm.
    翼は細長く(narrow)、 軽量構造な体格の(lightly built)チュウヒ。 ヒメハイイロチュウヒ(Circus pygargus=Montagu’s Harrier)に近似。
    翼は長く、先端はとがって(pointed)いて、他のチュウヒに比し、翼は細い(narrower than in other Circus)。

    『幼鳥(Juv)』

    ヒメハイイロチュウヒに似る。体下面は縦斑のない栗色(chestnut色)。
    頭部パターンは、成鳥メスに似るが、より顕著なのは、頬の暗色の三日月型と後頸部の幾分幅広の 白い衿。顔・頭部の羽毛の特徴が際立つ。
    首周りの白い円周斑が目立つ。


    『未成熟若鳥オス(immature male)』

    2年目の春、下面の栗色はより鈍白色味(paler)或いはより黄褐色味或いはより薄白黄色となる(特に、腹面で顕著)。 胸部に少し細い縦斑が出ることもある。灰色味が、多少とも頭部・胸部・上尾筒に侵入してくる。幼鳥の頭部パターンは略そのまま 維持される。
    2年目夏の終わりに、第1回換羽(風切羽の換羽)。これにより、成鳥色に似てくるが未だ鈍い体色。


    飛翔

    ヒメハイイロチュウヒに似る。しかし、オスのウスハイイロチュウヒは、チュウヒ類中最も活発・闊達で、敏捷で身軽で機敏な飛翔を見せる。
    他のチュウヒに比し、より乾燥した生息地を好み、所謂ステップや草平原によく現れる。


    《ステップとは、例えば、カザフステップ(カザフスタン)の如く、黒土地帯に、樹木の少ない、広大な乾燥した草原、畑地、荒地が広がる地帯。》
    《それにしても、飛び方は、チュウヒ・ハイイロチュウヒとは異なり、むしろ、 ツミやハイタカの飛翔に近い飛び方をします。 高速飛翔・鋭角的飛翔・ 耐強風性・高速反転可能飛翔・超低空飛行など、など。 あまりに躍動的で、観ているだけで 興奮します。》


    生息環境 Habitat

    ヒメハイイロチュウヒとオーバーラップする。 しかし、ヒメハイイロチュウヒより、より乾燥した土地を好む。 (尚、アルメニアでは、繁殖期、高度1720mの乾燥草原で、また、パミールでは2300m、アフリカではなんと3300mでも記録されている。)
    全く開けた地形を好む。(サバンナや森林を避ける傾向あり)。 この点、ヒメハイイロチュウヒのwetlandもOKというのと異なる。
    (人手のはいった)農地にも幾分、適応しているが、基本的には、自然のままの荒れた草原地帯(natural rough grassland)にて、増減する餌動物のハンターとして生きている。


    主な繁殖地域

    《本書記載繁殖地域の図によると、繁殖地は、ウクライナ南東部・カザフスタン・ロシア南部・カスピ海からアラル海の沿岸周辺諸国、からモンゴル、バイカル湖の南西部までの広い範囲の地域で、繁殖。》

    特に、『よく開けた、乾燥した草地・畑・草原』。

    《この鳥のドイツ語名は、Steppenkiekendiefと、ステップ(広大な乾燥草原・荒地)の文字を用いているのも、この鳥の生息地(鳥が好む土地・環境)を示しているように思う。》


    越冬地

    越冬地は、主に、インド(ミャンマー)と東アフリカ・南アフリカ地方。


    渡り Migration

    秋 : 8-11月だが、9月と10月に多い。
    春 : 3−5月中旬だが、3月中旬から4月末に多い。

    《渡りのルートは、欧州・地中海・中東・アフリカ方面ではかなり解明されているが、ユーラシア東部のルート(例えば、モンゴル辺りからインド向け? など)に関する記述は全くない。》

    実際の渡り(飛行)は、単独で、あるいは、小群で渡る。


    個体数 Population

    旧ソ連(USSR)では、乾燥草原に、普通に居るが、その他では、散在的である(USSR, common in dry grassland, but more or less sporadic elsewhere)



    餌は、主として、地上性の小哺乳類(げっ歯類=ハタネズミ・ヤチネズミ・トガリネズミ等)や レミングなど、そして、様々な小鳥類。 (従として)バッタや大型昆虫・爬虫類(トカゲ)・コオロギ・カブトムシなど。
    (小鳥が主な餌の一つだが)時には、大きい鳥では、ライチョウ類・コミミズク・ハシビロガモ といった鳥も襲う。


    繁殖

    繁殖期 : 5月、6月、7月前半。(ヨーロッパ南東で)。
    一腹卵数は 4−5卵 (時に、3−6卵)。
    抱卵期間は、29-30日間。
    雛 : やや晩成性、留巣性。
    孵化後、巣立ちまで :  通常、35−45日。
    雛の孵化時期が異なる為、雛のサイズに大きな差が出るが、虐めや 兄弟殺しの情報はない。
    初回繁殖年は、記録ないが、多分、近似チュウヒと同じく、2年ないし 3年後であろう。


    虹彩

    成鳥   : 黄色。 メスよりオスのほうが、やや深い色。
    幼鳥メス : グレーだが薄白褐色のリングがある。 後、黄色となる。
    幼鳥オス : メス幼鳥より、虹彩は、早く、黄色になる。



    黒色。 嘴の蝋膜は黄色。



    黄色。


    性差

    オスとメスの体色の差は大きい。